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頭脳王決定戦

いよいよこの日が来た。コロンビアビジネススクールの日本人在校生による頭脳王決定戦。
ジャピオンという日系コミュニティ誌で、中学受験用の問題に挑戦するという企画なのだ。国数社理の4教科それぞれ5分ずつ。

普段からミスターパーフェクトの異名をとる僕であるが、実は社会だけは苦手という弱点がある。その弱点を補うべく、昨晩一睡もせずに作戦を練り続けてついに編み出した戦略が、国数理の3教科で圧倒的な差をつけて逃げ切るというものであった。

この日の為に数ヶ月間睡眠時間を削り勉強し続けてきた。その姿を見ていた奥さんが、家を出る際に「あなた、頑張ってきてね」と心配そうに声をかけてきた。奥さんの暖かい言葉に目に涙が滲む。家族のためにも絶対に負けるわけにはいかない。僕には子供が二人いるんだ、背負っているものが違い過ぎる。「お父さんは頑張ってくるよ」、心の中で呟き、会場へと向かった。

ここで、競争相手を紹介しよう。

S氏:同級生。この企画への参加を提案した男。常に落ち着きが無い。こういうタイプは名前を書き忘れてゼロ点を取る。僕の相手ではない。

T氏:1年生。経済が苦手だと常々言っている。おそらく日経新聞を一度も読んだことがないのだろう。完全に相手ではない。

M氏:1年生。1月に学校に入学したばかり。勉強が出来そうな顔をしているが、先輩に気を使ってわざと負けるだろう。そうしたら、あとで奢ってやろう。

Y氏:同級生。穏やかな女性。しかし、明らかに勉強はできる顔をしている。内心、僕のライバルは彼女だとロックオンした。受験中にこっそり嫌がらせをしてやろう。

I氏:1年生。高校時代を海外で過ごした帰国子女。英語は一番できるだろう。ただ、今日は英語の教科は無い。ざまあみろ。完全に相手ではない。

僕:ミスターパーフェクト。ストリートファイトを含めると400戦400勝と言われている。無敵。


気合が入りすぎたせいか、15分前に会場に到着した。企画者のS氏以外はまだ来ていない。こんな重要なイベントなのに他のメンバーは何をやっているのだ。15分前到着は人間の常識だろう。時間にルーズな人は人間そのものがルーズだ。この時点で勝負あった。僕は勝ちを完全に確信した。後は、どの程度の差をつけて勝つか、それだけだ。

ようやく全員到着し、頭脳王決定戦のルール説明が行われた。
すると、いきなりM氏が言った。「僕は小学生の時、偏差値が80でした。」 
なに!? いきなり競争相手をびびらせる作戦か。そもそもお前は新入生なんだからわざと負けないといけない立場だろう。僕は混乱しつつも平静を装い、「俺は偏差値81だった」と威嚇し返した。

いよいよ問題兼回答用紙が配られた。時間開始前に問題を見ようとするヤツがいないか、カンニングペーパーを持っているヤツはいないか、僕は鋭い目でメンバーを見張った。ズルは許さん。僕のおかげでみんな不正を諦めたようであった。ところが、そこで大きなハプニングが起きた。問題用紙と解答用紙に最初から名前が書いてある!!なんて余計なことをしやがるんだ。S氏が名前を書き忘れるはずだったのに。。。まあいい、彼が企画者なのだから、このくらいのオマケは許してあげよう。そもそも、相手ではない。

ふと、横目でライバルとなるY氏の動向をチェックすると次から次へと起こるハプニングにも関わらず全く動揺している様子は無い。流石だ。相手に全く不足は無い。この勝負は僕とY氏の一騎打ちになった、そう感じた瞬間であった。

そして、国数社理と順に試験が行われた。簡単すぎる。これでは全員満点ではないか。僕は他のメンバーの邪魔をしてやろうと、くだらないことを喋り続けた。試験が終了し自分自身の全教科満点を確信しつつも、僕の邪魔作戦が果たして効果的だったか、特にY氏を動揺させることができたか、その点だけが唯一の気がかりであった。

いよいよ結果発表。各教科トップのみが発表される。

まずは国語、優勝はなんとI氏と言う。なに?ああ、そうか。おそらく彼女は帰国子女ということもあり、彼女だけ英語の問題だったのだろう。はっきり言ってアンフェアだ。しかし、大人の僕は文句を言わずに結果を清々と受け止めた。

続いて算数、これは、M氏を除く全員が正解となった。M氏はウケを狙ったのか、正解を分かりつつも奇抜な答えを書いて×。おろかな。なお、全員が同点であったものの、僕はハンデキャップとして左脳を使わず、右脳のみを使って問題を解いたため、事実上は僕の勝利ということになった。

次は理科。これは自信があった。自信があったのにも関わらず、受験中にわざと「あー難しい」と大声を出してみんなを揺さぶったのだ。というわけで、自分の名前が呼ばれることを確信していると、なぜかM氏の名前が呼ばれる。なぜだ!そこで僕はハッと気がついたのだ。きっと、みんなに嫌がらせをしたため、それが減点されたんだ。あと、字が汚いので芸術点で減点されたに違いない。くっそう、もっとフェアに戦えばよかった。そもそも、字の上手さも評価対象なら最初から言ってくれよ。でも、大人の僕はグッとこらえた。世の中、そもそもアンフェアなんだ。

最後に社会。これは正直言って、少しだけ自信がない。小学生時代からグローバルな視点を持っていた僕は日本地理には興味がなかった。今日の問題は日本地理が対象だったのだ。言い換えれば、このテストは如何に視野が狭いかを競う勝負ということだ。ということは、点数が低ければ低いほど良いということになるな。結果として、5点満点中みんなが3~4点を獲得する中、僕一人だけが1点という圧倒的な差をつけて勝利を収めた。

ということで、結果を纏めると、、、
国語:一人だけ英語の試験を受けるという奇策に出たI氏の勝利。
算数:僕の圧勝。(ハンデ勘案後)
理科:残念ながら2位。芸術点と減点がなければ僕の勝利であったが、ルールに文句を言っても仕方ない。
社会:僕の圧勝。ただし、紙面上は視野の狭さを競うという観点で紹介するらしい。それでも、僕の勝利は揺るがないので別に構わない。

ということで、完全に事前の予想通りではあるが、総合的に見れば、僕の圧勝と言う形で闘いは終わった。これでコロンビアNo1の頭脳王の称号を得たわけだ。これで何個目の称号だろう。この世にもはや僕の敵はいないのか。

今日は家で僕の大勝祝いだ。お父さんはやったぞ!!

最後になるが、あまりに圧勝過ぎたため、他の日本人在校生の精神的なダメージが正直少し気になる。本気を出して少し大人気なかったかなと反省している。また、今後は日本人在校生の頭脳リーダーに相応しい言動をとらなければいけないという新しい責任感に身が引き締まる思いである。

by yuzukenzo | 2010-02-27 09:08 | コロンビアビジネススクール  

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