メディア

トヨタのニュースを見ていると、メディアって本当に怖いなあと思う。

米国では、ありとあらゆるTVニュース・新聞記事が、「トヨタは金儲けを優先して、安全面を怠ったモラル的に大きな問題を抱えた会社」という前提で報道を行っている。ここまで大きく報道され続けると、事の真偽に関わらず、この前提は事実として、人々の頭に植え付けられる。学校でも先生や学生間でトヨタが話題に出ることが多いが、この前提を疑っている人は極めて少数だ。でも本当にトヨタ車がBig3の車よりキケンな車か、本当にトヨタは安全面を怠っていたのか、甚だ疑問に思う。

ふと、日本での少し昔のニュースを思い出した。長期信用銀行のリップルウッドGrへの売却時の瑕疵担保条項をめぐる議論だ。当条項は、仮に長銀の資産(貸出)に多額の損失が生じた場合には、リップルウッドは預金保険機構に買戻しを請求できるという条項。リップルウッドはこの条項を適用し、そごう宛債権を始めとして、合計1兆円を超える買取が行われた。

当時のマスコミは、この条項を問題視して以下のように報じていた。
-リップルウッドに一方的に有利な条項。極めて不当な取り決め。このような条項をOKした国の見識を疑う。
-このような条項を交わしつつ、10億円というタダのような値段で長銀を売却するなんて、国益の流出に他ならない。やり手のハゲタカファンドに好きなようにやられた。
-当条項の取り消しを求めてファンドと交渉すべき

僕はこの議論を完全に信じ、日本政府はバカなことをするなあと思っていた。だって、どの新聞もTVもこの論調であったから。

でも、今になって考えてみると、瑕疵担保条項的な取り決めはM&Aにおいては一般的な条項である。当時の邦銀の資産査定レベルを考えると、リップルウッドが当条件を要求したのは至極当然だし、その後、実際に1兆円を超えると債権買取が生じたことは、結局は長銀の資産査定の甘さと、長銀が債務超過であったことの証左に思えて仕方ない。つまり、当条項があって、ようやく長銀の評価は10億円だったのだ。もちろん本質的なモラルハザードがあったのは事実だが(リップルウッドに貸出先を再建するインセンティブがない)、国としては、その点も充分理解した上で、長銀破綻による損失と当条項付の売却の損得を比較して後者を選んだのだと思う。

僕が言いたいことは、大新聞や大手TVメディアの報道を鵜呑みにしては、真実を見誤る可能性があるということ。

今回のトヨタの事例で言えば、わずらわしい日本企業は徹底的に叩いておけば良いという考え、長銀の事例は、国・政府のやることはすべて批判しておけば良いという考え、それらが報道のベースとなっているため、極めて歪められた情報が氾濫し、真実が伝わらない状況になっているように感じる。

今後もトヨタは安全面への配慮が足りない会社、長銀は日本政府がファンドに手玉に取られた事例として、人々の記憶に残っていくだろう。メディアとは怖いのだ。
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by yuzukenzo | 2010-03-02 12:57 | 金融・経済・政治・社会  

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